「貸し倒れない為の売掛金回収テクニック」
Vol.9 甘い話に気をつけろ!!出資と貸付をめぐるトラブル
今回の案件そのものは、今までの「売掛債権の未回収」とは若干趣旨が異なります。
返済見込のないクライアントを詐欺や刑事告訴といった観点から制裁を加えることができるのかどうか、興味深い案件事例だと思います。
返済する意思が見られないクライアントを「警察に訴えよう」などとおっしゃる方もいます。果たしてそのようなことが可能なのでしょうか。
事例の概要 相変わらず、金銭の未回収案件というのは、債務者に振り回されることから始まります。
登場人物は、ある特殊業界の映像製作会社が債務者、この債務者に貸し付けをした複数の一般人が債権者です。
この二者は、債務者が上場を目指しており、そのための運転資金の調達として一人頭100万円を借り入れ、上場の暁にはこの貸付金に対して株式を発行するといういわゆるデット・エクイティスワップという方法による契約を締結していました。把握できている債権者だけで7人、700万円ありました。
上場の目処は3年としており、その計画は書面のうえでは、綿密に練られたものでありました。しかしながら、1年経ち、2年経ちしているうちにこの会社の信用不安が債権者の間でささやかれ始めます。債権者は、一様に不安になり資金の回収を要求するものの、債務者がのらりくらり本題をはぐらかせ、ついには音信不通となるという典型的なパターンでした。
「出資」は、返済義務がありません。
お金を会社に「出資した」というのと「貸し付けた」というのでは、まったく取り扱いが異なります。契約書を取り交わすとき、この違いは明確にしておきましょう。
どちらも形の上では、会社に資本を提供するということには変わりありません。
出資とは、出資者(株主といいます)が株式を購入し、文字通り資本金を提供することを意味します。配当を得ることができる可能性がある反面、この会社が倒産してしまうと原則的に出資したお金は戻らないと思っていただいて間違いありません。
出資金の返還を請求したとしても、会社は返還請求に応じる必要はありません。出資者は株式を他の者に譲渡するしかないのです。
貸付金も、会社が破産してしまえば戻ってこないことには違いがないのですが、こちらは原則的に債権者の要求に応じて、または契約の定めた事項や貸借期間の満了により返済義務のあるお金です。
もしもあなたが、ある会社に対して金銭を提供し、書面による契約を交わしていない場合、相手の会社が「出資してもらったのだ」という主張を展開すると、厄介な話になります。
重々注意しましょう。
契約の特殊性 本案件では、資金調達の契約に「上場準備が進み、上場が具体的になったある時点で貸付金が出資金に振り替えられる」という手段を前面に打ち出した契約でした。
一見、債務者が、お金を借りる一方で、債権者に報いるために、上場した暁にはキャピタルゲインを得られるように配慮する、というものと思われます。
しかし、裏を返せば、最初から上場する意思もなく、資金調達をスムーズに行うためにこのような旨みを見せ、資金を調達していたということであれば、やはり詐欺罪ということも考えられる余地があるのかもしれません。
もちろん、出資者を募集していたときの経営者の態度を勘案すると、最初から人を騙して出資者からお金を集めていたということではなさそうですが、こればかりは本人でなければわかりません。
この続きは次回です。
事例集
>>Vol.1 キャッシュフローを直撃する売掛金未回収に要注意
>>Vol.2 実例に学ぶ未回収売掛金の回収プロセス
>>Vol.3 支払い督促の実情 〜 差し押さえだけでは不十分 〜
>>Vol.4 差し押さえは第三者債務者との交渉で回収する。
>>Vol.5 高級飲食店の「ツケ」文化から学ぶ契約の必要性
>>Vol.6 「滞留債権が発生した原因を追え」
>>Vol.7 架空取引に気をつけろ。信用調査のススメ
>>Vol.8 時効を認めさせずに全額回収へ
>>Vol.9 甘い話に気をつけろ!!出資と貸付をめぐるトラブル
>>Vol.10 "親しい仲"が悲惨な結果を招いた事例
>>Vol.11 貸し倒れにならないための3つのポイント
>>Vol.12 安易な手形受け取りが思わぬ自体に
